二度のがんで気づいた「片付けの力」―整理収納アドバイザーが歩んだ生前整理への道

整理収納アドバイザー/生前整理アドバイザー 別城 美奈子(べっき みなこ)さん × FPofficeつむぎ 田中景子 セッショントーク

内視鏡看護師として18年のキャリアを持ちながら、整理収納アドバイザーとして片付けのサポートや生前整理の普及活動にも取り組む別城(べっき)さん。
二度の乳がんをきっかけに「片付け」と出会い、そこから暮らしも人間関係も大きく変わったといいます。
今回はファイナンシャルプランナーの田中景子が聞き手となり、その歩みをじっくり伺いました。

内視鏡看護師として18年。奥が深い…興味から進んだ内視鏡技師への道

田中:まずは別城さんについて教えてください!

べっき:はい。別城 美奈子(べっきみなこ)と申します。今も看護師として内視鏡技師やオペ室のお手伝いをしながら、それとは別に片付けで悩んでいる方のサポートをしています。

田中:2足の草鞋ということですね。別城さんとは片付けのお仕事をされている中で出会ったので、看護師もされていることは知りませんでした!内視鏡技師というのは、看護師さんとは違う資格なんですか?

べっき看護師プラスアルファの資格になります。内視鏡の仕事が好きで、もう18年ぐらいになりますね。先生の片腕として、切除や注入といった治療補助の役割を担っています。

田中:どういうところが好きなんですか?

べっき:私、看護師になって最初の配属が大学病院の手術室だったんです。身体のいろんな分野を勉強させてもらったんですけど、手術の間、患者さんは麻酔で何も話せないんですよね。患者さんを注意深く観察しないといけない。
観察力を働かせ必要なアプローチをしなければならない。その重要性と奥深さに興味をもち、そこから内視鏡につながって、技術的なところを深掘りできる面白さがあって、専門職としてやってみようと思いました。

田中:理系なんですね(笑)。

べっき:そうなんです。だからこういう対談とか、プロフィールを書くのも実は苦手なんです(笑)。

二度の乳がんと、後回しにしてきた自分の暮らし

田中:もし触れてはいけないことだったらスルーしていただいて大丈夫なんですが、インスタで拝見して、乳がんを経験されたと。闘病中のお話伺ってもいいですか?

べっき:一番最初は10年前です。2回やっているんですよ。ちょうど2016年の熊本地震の後に発覚しました。

田中:自分で気づかれたんですか?

べっき:熊本地震の後、食事があまり取れなくて少し痩せたんです。それで「あれ?」と触れてみたら、まあまあ大きかったですね。37㎜ありました。ステージ3に入るぐらい、リンパにも2つほど転移していて、ギリギリの状態でした。

田中:そういうがんの腫瘍って、見つかる頃にはもう何年も経っているものなんですか?

べっき:そうなんです。人の検査ばかりして、自分の検査はしていなかったんですよね。医療関係者は意外となりがちです。その後、いまから4年前に、今度は反対側にもがんが見つかりました。転移ではなくて、体質的なものだと思います。

田中:1回目の乳がんとわかった後、お部屋が汚いと感じられたそうですね。

べっき:そうなんです。私、本当に仕事ばかりしていて、家の中はもうぐちゃぐちゃでした。外でエネルギーを使った分、家の中がぐちゃぐちゃでした。それでも1回目のがん治療中は、抗がん剤をしながらも仕事を続けていました。

田中:それは休みたくないという気持ちがあったということですか?

べっき仕事を辞めるという選択肢が頭になかったんです。責任のある立場だったので、仕事から離れる考えに至らなかったです。抗がん剤治療しながら働いて、片付いていない家で寝る、みたいな生活をしていました。

「次かかったら…」――片付けが人生を変えた瞬間

べっきでも2回目のがんが見つかった時は、さすがに「あ、やばい」と思ったんです。次またがんが見つかったら…って。それでふと汚い家の中を見回した時に、「私、何やってたんだろう」と思って。
仕事は大事だけど、自分は何のために生まれてきたんだろうって、いろいろ考えたんです。こんな荒れた生活を送るために生まれてきたんじゃないなって。
それで2回目のがんの時は、自分を見つめ直してみようと考えて、7か月の休職を取ることにしました。休職中、自己流で片付けの勉強をして家の中を片付けました。そうしたら、この片付けの力はすごいなって実感したんです。

田中:片付けで、生活の考え方も変わったということですか?

べっき:そうなんです。片付けで全てが変化していきました。あらゆる面での考え方や人との関わり方など。この先の人生を考えた時に、後悔しないようにもう少し自分を大事にしてみようと思えるようになったんです。
片付けを始めてから、いろんな方々と知り合いました。お片付けの先生のような、憧れる人にも出会って。その人に会いに名古屋まで行ったり、いろんなことをするうちに、どんどん変わっていったんです。
積極的に行動するようにもなり、家族の関係性も良くなっていき、自分を大事にするようになったのか、笑顔で過ごすことが多くなりました。

片付けの力って、こんなにもすごいものなのだと思いました。もしかして私みたいな人がほかにもたくさんいるんじゃないかと思って、その人たちのお手伝いもしたいと思うようになって、片付けの資格を取りに行ったんです。
資格を取ってから始めたわけではなく、片付けでお役に立ちたいって、後から資格がついてきた感じですね。整理収納のコンサルタントとアドバイザーの資格を持っていますが、資格名自体はどこでもよかったんです。とにかく片付けの仕事がしたかった。

変わったのは部屋だけじゃない――自分を責めなくなった暮らし

田中:片付けの前と後で、具体的にはどんなところが変わったんですか?生活習慣も、考え方も含めて。

べっき:朝起きた瞬間から変わりますね。仕事から帰ってきても、以前は茶碗を次の朝まで洗わないような人だったんですけど、それが変わりました。片付けが苦にならなくなり、回転も早くなって。何より、自分を責めなくなったんです。
以前は、目の前の景色が込み合ってて、目に入るものが全部チカチカする感じがして、片付けなきゃって自分を責めて、でも出来なくてその場から逃げるように外出して、ストレス発散で買い物をして帰ってきては、また物が増えてって。

片付けてからは、物の一個一個に対する捉え方も変わって、それが人とのつながり方にもつながっていきました。片付けをされた方は、大体皆さん同じことをおっしゃるんです。物の考え方・お金の使い道・時間の使い方・そして精神面まで変わるって。まさにその通りでした。

田中:お片付けをされる前のべっきさんと、された後のべっきさんに会ってみたいです。

べっき:昔は瞬間湯沸かし器って言われてたんですよ。カッときたらバッと(笑)。今は変わりましたけど。

田中:それが穏やかになったということですね。

べっき:本当に変わるんです。これは体験しないとわからないと思うんですけど。

田中:それはやっぱり、一番の要因は家が綺麗になったことだと思われますか?

べっき:そうですね。病気になって、家を片付けたことで、自分を責めなくなった。そこは大きいです。一度きりの人生を、後悔しないように自分の理想に近づけたいと思ったから。真剣に自分の生き方を考える機会になったのは病気で、そこから片付けにつながっていった感じです。全部がつながっている気がします。

憧れの人との出会いと、依頼者に起きる変化

田中:先ほど、憧れているお片付けの先生がいるとおっしゃっていましたが、どうやって出会われたんですか?

べっき:お片付けを始めたら、ラッキーなことがいろいろ舞い込んできて。その方はインスタグラムで発信されている方だったんですけど、たまたま熊本にその方と知り合いの人がいて、出会うことができたんです。
一対一で会わせてもらいました。その先生が名古屋でお家を使ったツアーのようなことをされていたので、半年後には私も会いに行きました。本当にラッキーなつながりができました。

田中:わかります。私自身、綺麗好きというタイプではないんですけど、家が散らかっているのはすごく嫌なんです。
散らかってくると、頭の中の整理もつかなくなってくる気がして。収納の中がごちゃごちゃしていると、TODOをどこかに押し込めているような気持ち悪さがあるんですよね。片付けると頭の中まで整う感覚、よくわかります。

べっき:本当にそうなんです。いろんな方のお宅に片付け訪問サポートしているんですが、必ず皆さん最初に「すみません、こんな汚いお家で」と謝られるんです、ご自分を責めているような。でも、片付けが進んでいくと、本当に表情が明るく変化していくんですよ。

田中:綺麗になっていくとですか?

べっき:どんどん変わっていきます。綺麗というより、考え方が変わっていく感じですね。だんだん「楽しい」と言ってくださるようになって。そういう形で人生が変わっていくお手伝いができるのは、素敵なお仕事をさせてもらっていると思います。

「お金と時間、精神が変わる」――子育て世代にも響く片付けの効果

田中:昨日ちょうど、子育て世代のママが集まるサークルで、小学生の子どもたちにもお金について質問する機会があったんです。
「今5万円持っていたら、自分が幸せになることにどんなふうにお金を使いたいか」と聞いたら、あるママが「家をずっと綺麗な状態に保つ仕組みづくりに使いたい」とおっしゃっていて。まさにそれだなと思いました。

田中:子どもたちは「そんなの自分で片付ければいいじゃん」と言うんですけど、「片付けてくれないから困ってるんだよ」って(笑)。

べっき:熊本はまだ少し遅れているところがあるんですが、片付けにお金をかけるという考え方が、ようやく根付き始めています。
代行とは違って、一緒に片付けて仕組みを作っていく形なので、費用は少し高くになるんですが、そういう考え方の方が少しずつ増えてきました。
子ども部屋も何度か伺うんですが、「片付けて、と言っても片付けないんです」って言われて。実際に見てみると、どこに物を直せばいいかわからない状態になっていることが多いんです。

子ども自身に「どこにこれを直せばいいの?」「なんで自分だけ?」と言われることもあります。だからこそ、お子さんが小さい頃から整った環境で、親御さんが簡単に片付けが出来る仕組みを作ってあげることが大事だとお伝えしています。
最近は小学校で片付け授業をやっている仲間も増えてきていて、小さいうちにその考え方を入れることが大切だと感じています。

田中:お金の話も似ているな~。私は「お金を増やす」よりも先に、「お金を整理する・管理する」ことが金融教育の第一歩だと思っているんです。
お小遣いを何に使ったか記録することで自分にとっていいお金の使い方とそうでない使い方を学んでいく。整理整頓も、自分にとって必要なものと不要なものを見極めるところから始まりますよね。

べっき:まさにそこが一番最初のステップです。そこができないと、収納にはたどり着けません。

田中:お金も、自分がお金をかけるべきところとそうでないところを見極めることがスタートだと思うんですが、それって誰も教えてくれないんですよね。だからこそ支出がどんどん膨らんでしまう人もいます。

べっき:モノにも同じことが言えます。人から見たらガラクタでも、その人にとっては大切なものだったりする。
先日も、「おばあちゃんの形見だから」と収納の一番奥にしまい込んでいた方がいたんですが、「大事なものなら、出して使ってあげましょう」とお伝えして、食器として使うのではなく、飾って活かす方法をご提案しました。物の価値・お金の価値・人の価値って、本当につながっていると思います。

田中:片付けも自己理解につながりますよね。この服が自分にどれだけ幸せを与えてくれるか、みたいなところに向き合うというか。

べっき:「痩せたら着る」という服がある方には、「痩せたら嬉しくて新しく買いたくなりませんか」とお伝えしています。実際に今着て外に出てみましょうかと言うと、恥ずかしくて着られない、となることも多いですね。そのお客様に合わせながら、背中を押す言葉をかけるようにしています。

一人で旅立った姉が教えてくれたこと

田中:最後に、「生前整理」というテーマについて伺いたいです。なぜ生前整理を始めようと思われたんですか?

べっき:看護師としての経験が大きいです。お腹を開けた途端にもう手の施しようがない方もいらっしゃったり、検診を受けていれば早期発見出来たはずのがんが、末期なってから見つかるケースもたくさん見てきました。
そして自分自身も乳がんになったり、友人にも同じようにがんになった人が何人もいて、抗がん剤治療のときの考え方など、相談を受けることが増えていったんです。何人もの友人を見送ってきました。つい先日亡くなった四十代の友人は、余命を家族に伏せられたまま最期を迎えました。

それ以前に見送った方の中には、受け入れられないながらも家族と向き合い、お礼を言いながら旅立っていった方もいたんですが、伝えられないまま最後まで疑いを抱えたまま亡くなってしまうと、家族との時間もぎくしゃくしたまま終わってしまう。

そして一番大きかったのは、姉が亡くなったことでした。姉は六十一歳で、去年の十月に、家で一人で亡くなっていたんです。発見されたのは次の日でした。実は姉とは喧嘩をしていて、お互いに何を言いたかったんだろうという思いが残りました。一人で亡くなっていく人はこれからも増えていくんじゃないかと思ったんです。

警察が来て、レシート一枚から最後に何を食べたか、最後にいつ姿を見られたかまで調べていかれます。姉は部屋を綺麗に整えていたので、時間もあまり要さずに済んだと思います。
もし家が片付いていなかったら、時間もかかり大変なことになっていただろうと感じています。姉が最後に何を伝えたかったのか、どんな思いで亡くなっていったのか、看護師をしていたからこそ、そういうことをどうしても考えてしまいます。

スマートフォンも開けず、何も残っていませんでした。まさか六十一歳で自分が亡くなるとは思っていなかったでしょうから。それで、生前整理を勉強してみようと思ったんです。

「生前整理」とは何か――四十代からの備え

田中:生前整理の資格というのもあるんですか?

べっき:民間の資格になりますが、私は生前整理普及協会というところで資格を取りました。そこで生前整理を広めていきたいと思っています。
私は「四十代からの生前整理」を進めています。生前整理や終活というと高齢者の話だと思われがちなんですが、高齢の親世代のことは、子ども世代が理解していればサポートできます。

むしろ、四十代からご自身のこととして、子どもに言い残したいこと、やっておきたいこと、隠しているローンや財産があればきちんと整理しておくことをお勧めしています。暗いものとしてではなく、自分が過ごしやすく、家族も安心して過ごせるように整えていく。そこを今から広めていきたいと思っています。

田中:わかります。私も39歳でもうすぐ40なんですが、今の自分が突然亡くなったら家族は大変だろうなと思っていて、エンディングノートの必要性は感じていますし、少しずつメモは残しています。それに、義理の両親を見送った経験からも、自分の終わりのステージは人任せにしてはいけないなと感じました。

べっき:本当にそうです。突然死よりも、余命を宣告された方のほうが、実はしっかり準備ができるんです。だからこそ、その宣告は大事な機会だと思っています。そういう方々に寄り添って、その人が自分らしく最後まで過ごせる部屋づくりをしたいですし、最近は在宅で最期まで看取りたいというご家庭も増えています。
家族も患者さんも、自分らしく、家族らしく、揉めることなく過ごせる家づくりと、終末期に向けた心の整理。看護師としての経験と、病気の経験と、片付けと生前整理、私のこれまでの経験が全部つながっている感覚があります。ただ、遺言書やお金の面については私では責任を持てないので、そこは専門の方にきちんとお繋ぎするようにしています。

田中:本当に、いろいろな立場の専門家がつながって、寄り添っていけるといいですね。今日は貴重なお話をありがとうございました。

まとめ

二度の乳がんをきっかけに片付けと出会い、暮らしも人間関係も一変させてきたべっきさん。片付けを通じて見えてきたのは、「物の価値」「お金の価値」「人の価値」がすべてつながっているということでした。

そして、一人で旅立ったお姉さまの経験が、「生前整理は高齢者だけのものではない」という気づきにつながっています。四十代のうちから、財産や気持ちを整理しておくこと。それは、家族に安心を残すための備えでもあります。

片付けも、お金の管理も、生前整理も、根っこにあるのは「自分と向き合う」ということ。今日からできる小さな一歩として、まずは身の回りをひとつ片付けてみる、あるいはエンディングノートを開いてみる。そこから始めてみてはいかがでしょうか。

生前整理・お片付けのご相談はbe_fraislifeへ

会社名be_fraislife
代表者名別城 美奈子
インスタグラムhttps://www.instagram.com/mina.be_fraislife
問い合わせ(LINE)https://line.me/R/ti/p/@575mwkaz
保有資格整理収納コンサルタント
整理収納アドバイザー1級
生前整理アドバイザー1級
生前整理アドバイザー2級認定指導員
看護師歴34年